sasakimidoriのブログ

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読書録 たゆたえども沈ます

こんにちは、翠です。

 

たゆたえども沈まず

たゆたえども沈まず

 

 

今や世界中で名前を知らない人はいない、有名な画家フィンセント・ファン・ゴッホですが、生前彼の作品は陽の目を見ることはありませんでした。

 

精神的にも追い詰められ、経済的にも困窮していたフィンセントの画家生活を支えたのは、テオドルス・ファン・ゴッホ、彼の弟です。

 

しかし、弟テオドルスとて裕福だった訳ではなく、毎月のお給料の中から彼自身の愛する家族の生活費とフィンセントを支えるお金を工面していました。

 

怒り、憎しみ、悲しみ、羨望、憧憬、嫉妬、罪悪感、愛…

"絆"は様々な感情を含み絡み合いながら、兄弟は決して長くはない生涯を終えます。

 

そんなゴッホ兄弟の悲しき愛の物語は、数々の文献を参考にしたフィクションですが、林忠正ゴッホ兄弟が出会っていたなら、こんな風に会話を交わしていたのかもしれないな、と楽しみながら読み進めました。

 

手に取る様に登場人物の感情や物語の情景が伝わるマハさんの作風は素晴らしいの一言です。

 

ラストに近づくにつれ、溢れる涙を抑えるのは容易ではありませんでした。

 

読了した今、強く思うことは皆様がゴッホの作品に触れる時、是非彼の、彼らの生涯を知って欲しい、ということです。

 

また、下記は作中で印象的だった言葉。

 

自分で価値を見出すことはせず、むしろ他人が価値を認めたものを容認する、それが日本人の特性だ。だから、フランスなりアメリカなり、日本以外の国で認められた芸術を、彼らは歓迎するのだ。

 

これはパリに渡った日本人、林忠正の言葉です。

 

私はこの本に出会い、彼の存在を初めて知りました。ゴッホの作品に少なくない影響を与えたであろう人物です。

 

自分が信じる”価値”が世間に認められず理解されず苦境の中にいる方は、本著から何か感じるものがあるのではないでしょうか。

 

 

 

 

 

midori sasaki.