読書録 世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか?
世界のエリートはなぜ「美意識」を鍛えるのか? 経営における「アート」と「サイエンス」 (光文社新書)
- 作者: 山口周
- 出版社/メーカー: 光文社
- 発売日: 2017/07/19
- メディア: 新書
- この商品を含むブログ (6件) を見る
~読書メモ
1.論理的・理性的な情報処理スキルの限界が露呈しつつある
→正解のコモデティ(似たり寄ったり)化
2.世界中の市場が「自己実現的消費」へと向かいつつある
→「全地球規模での経済成長」が進展しつつある今、世界は巨大な「自己実現欲求の市場」になりつつある。
・インスタのように「人の承認欲求や自己実現欲求を刺激するような感性や美意識が重要になる。
・アップルのMacのように「全ての消費ビジネスがファッション化しつつある」ということ。アップルが提供している最も大きな価値は「アップル製品を使っている私」という自己実現欲求の充足であり、さらには「アップルを使っているあの人は、そのような人だ」という記号の発信である。
3.システムの変化にルールの制定が追い付かない状況が発生している
→システムの変化に対してルールが事後的に制定されるような社会。
そのような世界において、クオリティの高い意思決定を継続的にするためには、明文化されたルールや法律だけを拠り所にするのではなく、内在的に「真・善・美」を判断するための「美意識」が求められることになる。
■脳科学と美意識
・「セルフアウェアネス」を高めるためのトレーニングとして瞑想を中心としたマインドフルネスへの取り組みが世界中で進んでいる。瞑想によって前頭前野の皮質の厚みが増すことがわかっている。
・一方で前頭前野については「美を感じる役割」を担っているらしいことが、近年の脳研究からわかってきている。人が「美しい」と感じたときには、前頭葉の一部にある領域で血液量が増加することが確認された。この部位はまた同時に、自分の意識や注意をどこに向け、どのようにコントロールするか、つまり意思決定の中枢にかかわっていることがわかっている。
ある患者は、脳の前頭前野の大部分を除去した結果、身体の発する微細だが重要な兆候(ソマテイック・マーカー)をキャッチできなくなり仕事・家庭生活において適時、定説に意思決定する能力を失った。そして同時に音楽や絵画に感動する力「美意識」を失ってしまった。
高度な意思決定の能力ははるかに直感的・感性的なものであり、絵画や音楽を「美しいと感じる」のと同じように、私達は意思決定しているのかもしれない。
~世界のエリートは「どうやって」美意識を鍛えているのか?
■詩を読む
リーダーシップと「詩」には非常に強力な結節点がある。
“人の心を動かす“表現にはいつも優れたメタファー(比喩の引き出し)が含まれている。リーダーの仕事が人々を動機づけ、一つの方向に向けて束ねることであるとするならば、リーダーがやれる仕事というのは徹頭徹尾「コミュニケーション」でしかないということになり、少ない情報量で豊かなイメージを伝達するための「メタファーの技術」を学ぶのは、とても有効だということになる。
優れたメタファーの宝庫である「詩」を学ぶことは、とても有効なリーダーシップのトレーニングになる、ということ。
■絵画を見る
アートを見ることによって「観察力」が向上する.
例えば医師の仕事はいずれビックデータを蓄積した人工機能に取って代わられるようになる、と言われるが、医師の仕事は診断だけではなく、再発防止に向けて生活習慣を変えさせたり、やる気が持続するようなリハビリのプログラムを考えたり・・・ここで重要になってくるのが「観察眼」である。
入力される情報として定式化されない範囲まで観察し、観察された事象から様々な洞察を得て意思決定の品質を高める。私たちの多くが関わっているビジネスの世界でも同じことがいえる。
midori sasaki.