読書録 君たちはどう生きるか
こんにちは、翠です。
こちらの本、2017年8月に刊行され、SNSで著名人が言及したり、メディアにさかんに取り上げられたりと、現在も勢いが衰えていません。
少年「コペル君」の日々の生活の中で生じる悩みや疑問に対し、「親戚のおじさん」が答えていくという物語です。
原作が刊行された1937年は日中戦争が始まり、社会に不安が広がっていた。今の不透明な時代。「原作が世に出た時代は現代に重なる」と、マガジンハウスの鉄尾氏はみている。(2018年1月27日日経新聞より抜粋)
わたしがいいな、と思った文章をピックアップしてみます^_^
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まず肝心なことは、いつでも自分が本当に感じたことや、真実心を動かされたことから出発して、その意味を考えてゆくことだと思う。君が何かをしみじみと感じたり、心の底から思ったりしたことを、少しもごまかしてはいけない。そうして、どういう具合に、どういう事について、どんな感じを受けたか、それをよく考えてみるのだ。そうすると、ある時、ある所で、君がある感動を受けたという、繰り返すことのないただ一度の経験の中に、その時だけにとどまらない意味のあることがわかってくる。それが、本当の君の思想というものだ。常に自分の体験から出発して正直に考えてゆけということなんだが、このことは、本当に大切なことなんだよ!ここにごまかしがあったら、どんなに偉そうなことを考えたり、言ったりしても、みんな嘘になってしまうんだ。
肝心なことは、世間の目よりも何よりも、君自身がまず、人間の立派さがどこにあるか、それを本当に君の魂で知ることだ。いつでも、君の胸から湧き出てくるいきいきとした感情に貫かれていなくてはいけない。北見君の口癖じゃあないが、「誰がなんと言ったって」というくらいな、心の張りがなければならないんだ。そうして、心底から、立派な人間になりたいという気持ちを起こすことだ。
繰り返していうけれど、君自身が心から感じたことや、しみじみと心動かされたことを、くれぐれも大切にしなくてはいけない。それを忘れないようにして、その意味をよく考えてゆくようにしたまえ。
簡単に言うと、色々な経験を積みながら、いつでも自分の本心の声を聞こうと努めなさい、ということなんだ。
人間が人間同士、お互いに、好意をつくし、それを喜びとしているほど美しいことは、他にありはしない。そして、それが本当に人間らしい人間関係だと、そうは思わないかしら。
自分の人間としての値打ちに本当の自信をもっている人だったら、境遇がちっとやそっとどうなっても、ちゃんと落ち着いて生きていられるはずなんだ。僕たちも、人間であるからには、たとえ貧しくともそのために自分をつまらない人間と考えたりしないように、また、たとえ豊かな暮らしをしたからといって、それで自分を何か偉いもののように考えたりしないように、いつでも、自分の人間としての値打ちにしっかりと目をつけて生きてゆかなければいけない。
君のような恵まれた立場にいる人が、どんなことをしなければならないか、どういう心掛けで生きてゆくのが本当か、それは、僕から言われないだって、ちゃんとわかるはずだ。
自分が消費するものよりも、もっと多くのものを生産して世の中に送り出している人と、何も生産しないで、ただ消費ばかりしている人間と、どっちが立派な人間か、どっちが大切な人間か。生み出してくれる人がなかったら、それを味わったり、楽しんだりして消費することはできやしない。生み出す働きこそ、人間を人間らしくしてくれるのだ。だから、君は、生産する人と消費する人という、この区別の一点を、今後決して見落とさないようにしてゆきたまえ。目下消費専門家の君たちも、自分では気がつかないうちに、ほかの点で、ある大きなものを、日々生み出しているのだ。それは、いったい、なんだろう。お互いに人間であるからには、誰でも、一生のうちに必ずこの答えをみつけなくてはならないと、僕は考えている。
彼らがその非凡の能力を使って、いったい何を成し遂げたのか、また、彼らのやった非凡なこととは、いったいなんの役に立っているのかと、大胆に質問してみなければいけない。
世間には、悪い人ではないが、弱いばかりに、自分にも他人にも余計な不幸を招いている人が決して少なくない。人間の進歩と結びつかない英雄的精神も虚しいが、英雄的な気概を欠いた善良さも、同じように空しいことが多いのだ。
自分の中に少しでもきれいな心がわいてきたら「今度こそそれを生かさなきゃ」って、背中を押してくれることがあるから。もしかしたら潤一さんにも、もっともっと大きなことで、やるべきことをできずに後悔することがあるかもしれない。でもね、たとえそのときは苦しくても…その経験を忘れてはいけないの。これからの長い道のりの中で、きっと何度も背中を押してくれるから。
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コペル君の周囲の大人たちが「立派な人間の生き方」について説いています。
漫画なので、スッスーと入ってくるかと思いきや、これらの文章はコペル君とおじさんとの手紙のやり取りの文章なんです。長いし、なんか難しいし、最初はここ読み飛ばしてました笑
漫画として物語を楽しみながらも、その言葉たちをアドバイスとして受け止め、いかにどう自分に取り入れていくか、自分はどう思うのか、自分に置き換え、考えることが重要な本であると思います。
是非読んでみて下さい!
sasaki midori.